熱い思いと渦潮に出会う

 

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淡路島の南側、福良という港

鳴門海峡の渦潮で有名だ。メジャーすぎて実は一回も見たことはなかった。

観潮船、日本丸と咸臨丸。

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二隻の船がひっきりなしに出入りする。賑やかな港、乗客も乗組員も、桟橋の綱取りの人もみんな笑顔だ。

 

 

作業の合間に「戦略室」と書いてある営業の方の事務所を借りて資料をまとめていると、子供向けに渦潮の実験教室の準備をしていたりする。
営業の人が博士役になりきり渦潮についての子供向け学習用の劇(結構本格的)を実験室として、セリフの練習をとても楽しそうにしている。
でっかいエアバズーカ砲(段ボール製)で渦潮の仕組み、潮流の仕組みについてわかりやす解説を作り込んでいる。夏休み、子供が大喜びするナイスな戦略ができそうだ。

 

 

僕たちスピリット・オブ・セイラーズはこの渦潮観潮船日本丸バウネットをつかったアクティビティーの作成のために来た。長崎の帆船まつりで運航会社の社長さんとお知り合いになり

帆船型って言っても飾りでしょう?という僕のなんとも失礼な疑問に

「飾りの船を体験できる船に改造したい。まずは本物の帆船を見に来た。
これからの観光船は見るだけでなく、“体験”できる船にしていかなければならない」

社長の熱い思いが伝わってきて、もっと帆船の楽しみのエッセンスを取り入れたい!体験できる観光船を!と意気投合し何か手伝えないかということになり、まずは日本丸のバウスプリットにバウネットを張り、バウスプリットの先端まで行ける様にしよう!という計画になった。

 

本来、バウスプリットに張ってあるバウネットはジブセイルをたたんだり、開いたりする時に安全にできる様にするための作業用の足場だ。
だから見た目よりも歩きにくいし、乗客の人が安全に楽しむためのものではないので、ただネットを作って張れば良いというものではない。
計画の段階でも乗組員の方からは安全対策についてたくさんの質問が来た。

「乗組員の方はあんまりやりたくないのかな・・・」質問に答えながら、僕はそんなことを考えていた。考えてみればなぜわざわざ危ないことを増やしてどうする。という意見はもっともだ。

しかし話は進みGOサインが出て、いざ現場に着いたら今までの考えや印象は吹っ飛んだ。しっかりとしたジャックステー(手すり)が溶接され、ワイヤー、リギンが新調されて今までのものよりも強いものに変更されていく、次々にものすごい早さで安全対策がドックで作られていく様子に呆然としていると工務監督な方が「うちらには帆船のことはわからないけど安全にこのアクティビティーをできる様にするにはどうすべきかとても考えました。なにか足りないとこやおかしなところがあればすぐに教えてくださいね!ネットはお任せしましたよ!」という言葉にスイッチが入った。
作業は夜遅くまでかかってしまったけどたった2日であとはネットを待つだけのバウスプリットが出来上がってしまった。さすがプロフェッショナルだ。ドックの職工さんの手際の良さもとても素敵だった。


ドックも終わり、ネット作成に取り掛かる前日にみんなで食事に誘われたのでお邪魔した。

「この船は海洋体験の入門編と思ってる」

社長が目を輝かせながらたくさんの将来像を語る。それに呼応して乗組員の人たちが実務に則した実現可能な具体的アイディアを出していく。
冗談もぽんぽん出てくる。

風通しという言葉がいらないくらいにざっくばらんな関係に、お互いの仕事に尊敬しあってるんだなと感じた。

ネットは思っていたよりも順調に編み込みが進んだ。桟橋では夏の日差しがとても暑いけど日陰に入ると海風が心地よく快適に作業できた。乗組員や桟橋の人たちに声をいつもかけてもらえて、たくさん差し入れももらった。船の売店の人にもアイスもらった。

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作業も終盤に差し掛かり、あとは編み上がったネット取り付けを待つばかりとなった時「今日はプレミアム航海があるから船に乗りませんか?」とお誘いを受けた。

渦潮。

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感動した。

強い潮流から生まれる海のなかに滝の様な落差が生まれる現象と渦潮の迫力にただの観光を飛び越えて、地球の不思議、潮汐、天体、海への関心が湧き上がる。すごい!すごい!
自分は何をしてきたんだと思った。帆船に乗っていること、大きな船を帆走させる技術をどこか鼻にかけて観光船、遊覧船を白い目で見てきたのではないだろうか。こんなに熱く、来てくれる乗客のことを会社全員が同じ方向を向いて進んでいたことはあったのだろうか。もっと自分が帆船に乗っていた時にできることがあったんじゃなかと思えてきて、胸が熱くなってくる。

 


船長と話すと、「実際の帆船てどんな操船なんですか?」とすごく興味を持ってくれる。
こっちも「あんな強潮流のなかで操船するってどんな感じなんですか?」と質問する
「あんな潮が速いところに突っ込んでいって操船するのは毎回大変だ」
と言いながらもその笑顔に安全航海への責任感と誇りを感じる。

この二隻の船は僕が乗ってきた帆船のどんな帆船よりも「乗船しに来てくれた方に海で素晴らしい体験をしてもらいたい!」という乗組員の熱い気持ちが伝わってくる船だ。
ネット取り付けにも熱が入る。同時にとても緊張した。
取り付けはうまくいって日本丸はバウスプリット先端まで行ける船にかわった。
乗組員が乗って安全チェック。楽しそうに笑いながらでも見るところはきちんとみてらっしゃる。皆さんの気になるところ、安全に関するアイディアなどを聞きながら調整に二日間かかって完成した。

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最終日は実際に乗組員の方にお客さん役とインストラクター役で別れてハーネス(安全ベルト)の取り扱いや誘導シミュレーション、セイフティートークに関してをインストラクションさせてもらい、補修の仕方など資料にまとめて南あわじ、福良港を発った。また来たいな!

 

メンバーが一言、「アクティビーティーを作りに来たんですけど、みんなの海での新しい遊び場所が一つ増えたって感じで嬉しいですね!」

本当にそう思う。自分のやりたいことはそういう場所や人を作り、多くの人に海の体験を提供していくことだと思う。


さあ、スピリット・オブ・セイラーズの夏はこれからまだまだ続きます!次は大島セーリング部合宿だ!!

 

 

 帆船バカより